俺様と奏でるハーモニー
「あ、修さん、その前に。ピッチは440でいいんですか?」
「それでいい。だいたいこっちがそれに合わせることになってるから」
「そうですか。もしかしたら、式場のピアノは442かも知れないですけれど、大丈夫ですか?」
最近のピアノは、442で調律されていることも多いの。
うちの学校のピアノも442だったわ、確か。
「大丈夫。吹いてるうちに何とかなるから、心配するな。
どっちかっていうと、六寸管の方が高めの音が出るから」
「六寸管、ですか?」
「そ。『春の海』は尺八ではなく一尺六寸管で演奏するんだ。
尺八って言うのは、一尺八寸だからつけられた名前なんだけどな」
「さすが師範ですね~。その調子で授業研もお願いしますね!」
「……余計なこと思い出させるなよ、テンション下がるだろ。
合わせるから由奈、さっさと弾け!」
あわてて私も構えて、キーボードの音量を上げる。
イントロの音を出して、音楽に集中。