DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「ヨイショッと――」

 響に背負われて階段をゆっくり降りる。

「ねぇ、響」

「ん?」

「さっきの事だけど」

「なに?」

「千聖のこと」

「ああ――」

 少しぶっきらぼうに返事をした響の顔を覗き込むように話す。

「私ね、千聖だって本当は一人が好きなわけじゃないと思うんだ。響や私みたいに友達と楽しく笑ったり、冗談言ったりしたいんだと思う。だけど……きっとそれが出来ない理由があるんだよ。何か人に言えない理由が。今はまだそれが何なのかは分からないけど、だけど私、私ね――」

「分かったよ」

 響は未央の言葉を遮った。

「おまえの気の済むようにすればいい。でもな、未央。これだけは覚えておいて欲しいんだ。もしも―― もしもあいつのせいでおまえに何かあったら、俺はあいつを絶対に赦さない」

「響……」

「絶対に赦さないから」

「うん……分かったよ響」

 真っ直ぐ前を向いたままの響に、未央は答えて小さく肯いた。





…★……★……★…



☆NEXT☆


「ったくムカつくな。こうなったらアップルは絶対に手に入れてやる」

「千聖、何?何のこと?」

「白雪姫の話にはリンゴが出てくるのが当たり前って事だ」

「へえ……千聖、“イソップ物語”知ってるんだ」

「“イソップ”ってのはキツネがツルを家に呼んで、皿に入れた魚を出すヤツだろ?」

「ああ!それ知ってる!それでツルがお礼に自分の羽根をむしって布を織るんだよね。感動の物語!」

「それは“鶴の恩返し”だ」

「そ、そうだっけ……」


  MISSION 10
  ― アップル ―  へ続く。



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