DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「まず一日目の昼間、秘宝展を見に来る。そこで監視カメラの位置や警備体制を調べて、計画を練り、実行する。だから二日目の夜」

「なるほどな。あっ!じゃあ俺たちの勤務の日じゃないか」

「そうか……嫌だな」

「ああ、………嫌だな」

 二人は心持ち肩を落として展示場を出て行った。

 足音が遠離る。

 途端にまた物音がした。

 今度は天井の辺り――

 続けてゴトッと天井の一部が動いて、人間が一人通れるくらいの穴がポッカリと開いた。

「残念だけど予想はハズレだ」

 千聖はフッと笑うと、天井裏にセットした装置のスイッチを入れた。

 天井裏に空間がある事に気付いたのは、このあいだの記者会見の時。

 木村が得意気な顔をして煙草をふかした瞬間だ。

 それは、ただボーっと見ていたなら気付かないような煙の動きからだった。

「取りあえず木村さんには礼を言わなくちゃな」

 ひらりと舞い降り、静かに立ち上がる。

 暗い室内を見回し、【アップル】のケースを確認した途端、今度は記者会見の時の木村の言葉が頭を過ぎった。

 会見中に煙草をふかす非常識な態度にも腹が立ったが、それよりもコメットを舐めきった言葉に舌打ちをしたくなった。

 自然と悪戯心に火がつく。

 顎に手を当て暫し考え、千聖はキュッと口角を上げた。

 先ずは部屋の中央に置かれたケースに歩み寄り目を細める。

 それから箱の周囲を確認し、針金を一本取り出して鍵穴に差し込んだ。

 ものの三秒もしないうちにカチッと鍵が開く。

「ヒュゥ―― これが特殊な鍵?こんなに簡単な鍵じゃ俺には通用しない。無いのと同じだって事分からないのか?」

 肩を竦め、ケースから【アップル】を取り出し非常灯の明かりに翳してみる。

 確かにリンゴのような影が中心に見えた。

「【アップル】迎えに来たよ。おまえを捜していたんだ。家で白雪姫も待っている」

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