DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「クゥン……」

 また鼻を鳴らす。

「どうした?リトル」

「ハゥン……クゥン――」

 千聖はリトルをじっと見つめてから、未央に視線を移した。

「なあ、メシやったか?」

「あっ!忘れてた。リトルごめん。今あげるわ」

 未央はキッチンへ行くと、帰りに買って来た缶詰を器にあけた。

 それを持ってリビングに戻る。

「リトルおいで、御飯よ」

 リトルは『御飯』という言葉が分かったのか、ソファーから降りて未央の傍に寄った。

 何も言わなくてもお座りをする。

「お利口ね。はい、どうぞ」

 ところがリトルは皿に入ったドッグフードをクンクンと匂いだだけで、また千聖の傍に戻ってしまった。

「なんだ?食べないのか?」

「この餌じゃ嫌なのかな?美味しそうなのに」

 未央は皿を持ち上げ、自分も匂いを嗅いでみた。

 途端にお腹がグウッと鳴った。

 千聖が思わず笑う。

「どれ―― リトル、来い」

 立ち上がった千聖に呼ばれて、リトルはもう一度未央の前に戻って来た。

 大人しく座る。

 未央から皿を受け取り、今度は千聖が皿を差し出した。

「よし」

 途端にパクパクと食べ始める。

 そしてアッという間に全部平らげてしまった。

「やっぱり腹減ってたんだな。美味かったか?」

「クゥン……」

 リトルの甘えた声。

 見つめる千聖の優しい眼差し。

 それを傍で見ていた未央は、溜め息をついた。

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