DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

 予想通りだった。

 そんな事、今さら未央の口から聞かなくても分かっていた。

 未央が千聖のマンションへ荷物を運ぶと言い出した時、いつかきっとこうなるだろうと思っていた。

 思っていながら手伝った。

 響は溜め息をついた。

「んな事分かってたさ。だから気にするなよ。俺、そんなに心の狭い奴じゃないから、これからだっていくらでも相談に乗るぜ。だってよ、未央のこと一番理解しようとしているのって俺じゃん?」

「響……」

「俺、頭は良くないしおまけに短気だけど、話しを聞くぐらいは出来るから。って言うか、聞きたいから。未央のために何かしてやりたいから。兄貴だと思って何でも話してくれよ。な?」

 目にいっぱい涙を溜めた未央が肯く。

「ありがとう響」

「うん。やっぱ、俺ってカッコイイよな」

「フッ……やだ、響ったら」

 涙を拭きながら笑った未央に、響は微笑んだ。

 精一杯無理をして作った笑顔だった。



…★……★……★…


☆NEXT☆

「千聖……それってホント?」

「ああ、本当だ」

「信じていいの?」

「ああ、信じていいよ未央」

「今、私のこと未央って……嬉しい。私、その言葉ずっと聞きたかったの。だって、だって……」

「だって?」

「千聖、私の名前憶えられ無いのかと思ってたんだもん」

「俺は馬鹿か?」

  MISSION 21
  ― アイズ・オブ・マドンナ ― へ続く。




< 203 / 343 >

この作品をシェア

pagetop