DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
MISSION 26 ― 途切れた糸 ―


 永池の屋敷。

 秋江の住む日本式家屋に最も近い塀を越えると、千聖は月明かりの射す縁側に目をやった。

『今度いらした時には、きっと御両親のことをお話ししますから』

 そう――

 今日ここへ来たのは、秋江からあのホワイトローズ号の沈没した日に起きた事を聞くためだった。

 何故、千聖の父の集めた石を七人が持っているのか?

 何故、大勢の乗客の中で千聖の両親だけが死んだのか?

 秋江はきっと自分の知っている全てを、包み隠さず話してくれるはずだ。

 自分の罪を償うためにも。

 そしてそれを聞けば、両親が突然行方不明になった理由も、父の『それまでは何としてもこの石を護らなくては』というメッセージの意味も分かるかもしれない。

 千聖は期待していた。

 おのずと足取りは軽くなった。

 庭の隅の生け垣の端にある戸口から、秋江のもとへ向かう。

 約束通り、秋江は一人で縁側にいた。

「こんばんわ。お待ちしていましたわ」

「こんばんわ。お元気でしたか?」

「ええ、元気でしたよ。だって元気にしていれば、またあなたにお会いできるのですもの。隆利さんに生き写しのあなたに会うこと。今の私に、これ以上の薬はありませんわ」

 千聖の問いかけに、秋江は嬉しそうに微笑んだ。

 しかしその顔色が以前より悪くなっているのを、千聖は敏感に感じ取っていた。

「お話ししましょうね。私の知っている事を全て」

 庭の池に映る月に雲がかかる。

 秋江は時間がもったいないとでも言うように、さっそく話し始めた。


< 254 / 343 >

この作品をシェア

pagetop