DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
 全部のドレスを運び終わると、全員に次の仕事が与えられそれぞれ散って行った。

 未央の仕事は、六階の披露宴会場にテーブルクロスを運ぶ仕事だ。

「白のクロス七十枚と、若草色のクロスを七十枚お願いね」

 持ち場に着くと、係りの人からすぐに仕事を言い渡された。

「二階にリネン室があるから、そこでもらって来て」

「はい」

 未央は元気良く返事をして、クロスを受け取りに二階へ向かった。

 勢い良く階段を駆け下りる。

 今日支給された真新しいスニーカーが、左足の火傷に擦れて痛い。

 未央は一旦足を止め、靴を脱いでみた。

 今朝できていた水膨れが破れたのか、薄めに巻いた包帯には血が滲んでいる。

「痛いはずだわ。でも我慢しなくちゃ」

 未央は溜め息をついて、自分に言い聞かせた。

 巨大なベビーカーのようなカートに乗ったテーブルクロスを受け取り、今度はエレベーターで会場に向かう。

 結構な重さだ。

 エレベーターの昇降口は、運良くコンクールの控え室の近くだった。

 未央は一旦コンクール会場のある五階でエレベーターを止め、解放と書かれたボタンを押した。

 このボタンは荷物を運搬用する時に使用する物で、一度押せばもう一度押すまでドアは開いたままになる。

 したがって、エレベーターは動かないのだ。

 白いクロスを一枚持ち、素早く二十五番の控え室に駆け込んで、ボディから標的のドレスを脱がせて裏返しにする。

 それをポケットに忍ばせてあったビニールの袋に入れ、すぐに全体重をかけて袋を筒状に丸めていく。

 シューッと音を立てて、見る間にドレスは一枚の白い板に変わっていった。

「回収完了。ホント、優れ物。千聖いいこと教えてくれたわ」

 裸になったボディには白いクロスを着せて、二十五の番号札とメッセージを添えた。

 上着を一旦脱ぎ、それをコルセットのように胴体に巻き付けてベルトで固定する。

 元のように衣装を調えると、未央は外の様子を窺って滑るように廊下へ出た。

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