Faylay~しあわせの魔法
立体映像だというのに、紫暗の瞳から伝わってくる威圧感は凄まじく、アリアの背中を嫌な汗が伝っていった。

セルティアギルドを吹き飛ばすというのなら……まだ、対処の仕様があったが。

国ごと、と言われてしまうと、アリアの手には負えない。

この緑豊かな土地に暮らす、何百万といるセルティア国民を危機に晒すことになる。リディル一人の命で。

「……分かりました」

アリアは頷いた。

「しかし、今しばらく猶予を下さい。身元不明の17になる少女、でございますね。捜索いたします」

『一日だ。それ以上は待たん』

「承知いたしました」


プツリと通信が切れ、カインの姿が消えてしまった後も、アリアはしばらく動けずに座り込んでいた。

「……支部長」

気遣わしげに声をかけるブライアンに目をくれることもなく、アリアはただ、綺麗に磨かれた床に目を落としていた。


どのくらい経ったか、アリアはスッと立ち上がると、ブライアンに命令を下した。

「エインズワース家に惑星王からのお言葉を伝えろ。それから、今から20時間後にフェイたちへ帰還命令を出せ。飛行艇を用意」

「はい」

「私はセルティア国王陛下と話をする。これより任務報告書は秘書官たちで処理しろ」

「畏まりました」

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