Faylay~しあわせの魔法
ゆらり、ゆらりと。

静かにたゆたう、ミルク色の霧が辺りを包み込んでいた。

深い緑の森をすっぽりと覆い尽くすそれは、外界からの干渉を一切受け付けない、静寂な空間を創り上げる。




──だから、言ったのだ。生かしておくべきではないと




静寂の中に声が響き、ミルク色の霧がさあっと動いた。




──あの娘は世界を滅ぼす。目覚めさせてはならぬものを、目覚めさせてしまった




──慈悲をかけるべきではなかったのだ




──このままでは人はおろか、我らもここにはいられなくなる




──“あのとき”の二の舞だ。どうするのだ……





ゆらゆらと揺らめく霧の中に、さあっと光が走る。

ざわめいていた声が、ピタリと止んだ。


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