Faylay~しあわせの魔法
みるみる黒い帆の海賊船が近づいてきたと思ったら、船首から銛が飛んできて、見事、艇尾にぶっ刺された。

「あー」

なんて声を上げている間に、あっという間に飛行艇は鎖でがんじがらめにされ、薄暗い船の中へと引きずり込まれていった。

「素早いな。何かする暇もなかった」

「そんな感心している場合ですか! 海賊ですよ、海賊! 何されるか分かりませんよ!」

どこかのんびりしているフェイレイに、ヴァンガードが食って掛かる。

「まあ、落ち着きなさいな、坊や」

ローズマリーはリディルの頭を撫でながら微笑む。

「相手が海賊ならば、すぐに殺されることもありませんわ」

「何故そう言いきれるんです?」

「海賊には、掟があるのですよ」

にこりと微笑むローズマリーに、ヴァンガードが眉を顰めていると、薄暗かった周りの景色が徐々に明るくなってきた。

そして、男たちの歌が聞こえてくる。

勇ましい、地に響くような大声が、陽気なフレーズに乗って船内に響いている。

なんとなく不気味にも思えるその歌を聴きながら辿り着いたのは、大きなドッグだった。

あちこちに壊れた小型の船が水上に並び、動く人の影がチラホラ見える。

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