Faylay~しあわせの魔法
「……お聞きしたいことがあります」

「なんだ」

カインは面倒臭そうに目を閉じた。

「貴方は、一体何をお望みなのでしょうか。人を殺め、国を滅ぼし……これに何の意味があるのか」

「……何も。ただ、すべてを滅ぼしたいのだ」

「滅ぼして、何になると?」

カインは薄く目を開けると、光の差さない窓へと視線をやった。

「私の愛する人が、“しあわせ”になる」

ふっと。

カインの目が、優しくなったような気がした。

暗闇の中では、それが確かなものか分からなかったが。

「それは、どういう?」

言葉の意味を尋ねると、カインはアレクセイへ視線を戻した。

「お前に答えてやる義理はない。私に忠義を尽くすなら、さっさとあの男の首とリディアーナをここへ連れて来い」

カインをジッと見つめていたアレクセイは、ずっと疑問に思っていたことを、口から滑り落とした。

「貴方は……一体、“誰”なのですか」

しかし、その問いに答えが返されることはなかった。

ただ、カインは怪しく微笑むばかり……。






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