Faylay~しあわせの魔法
『馬鹿者──!!』


駆けつけてきた仲間たちと一緒にドラゴンを退治し、無事にエスティーナの宿に帰還したフェイレイは、任務内容をアリアに報告していたのだが。

木製の机の上に置いた小型通信機からは、キンキンの怒鳴り声が響いてきた。

『ドラゴンの気配に気付きながら候補生を連れて行っただと? おまけに、リディルを前線に出しただと──!?』

通信機が宙に映し出す母の顔は、鬼のような形相だった。

「すみません、ごめんなさい、申し訳ありません」

思いつく限りの謝罪の言葉を呟く。

……その三つしか出てこなかったが。

『お前、帰って来たら覚えておけよ』

パキパキと拳を鳴らすアリアに、震え上がるフェイレイ。

『それで、リディルとヴァンガードは』

「ヴァンは右足骨折と左足打撲」

後ろを振り返ると、ベッドに座っていたヴァンガードが静かに頷いた。足には包帯が巻いてあったが、骨折はすでに完治しているはずだ。

「リディルは……」

チラ、と横に視線をやる。

リディルはこの宿についてすぐに目を覚まし、どこにも異常はないようだった。ただ、フェイレイの怪我の様子を見て静かに怒っていただけで。

今もアリアと通信しながら治療してもらっているのだが、リディルの召還したフォレイスたちもぷくぷくに頬を膨らませながら、フェイレイの傷を治してくれていた。……べっちべっちと傷口を叩きながら。

実は泣きたいほど痛いのだが、彼女たちは心配が怒りとなってしまっているわけなので、怒るに怒れないフェイレイである。
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