歌姫ロンリネス


『苦しみの向こうには虹が掛かっているんだ
キミに教えてもらったこと―』

目頭が熱くなって、知らず知らずの内に涙を流していた。

たぶん、ずっと我慢してきた涙。

いろんなことに疲れて、でも我慢して。

そんな我慢に辛くなって泣きたくて、でも我慢して。

でも今、枷が外れたかのように涙が溢れた。



『溢れる涙は―雨になって虹になって七色に光る橋が掛かって未来が見えて僕等はそれぞれの色を―…

ってひなた?』

「へ?あ…な、なんでもないです!大丈夫ですから!」

私が泣いてることに気が付いた先輩は、曲を止めて私の前で屈む。

身長の違いを改めて思い知った。

切なげな顔をする先輩は綺麗で、思わず見惚れてしまう。

「……ひなた…?」

ドキッ。
そんな甘い声で囁かないで下さい…今顔真っ赤ですよ。

「だ、大丈夫ですから…本当に」

「…そうか。
一つ、自慢していいか?」

「……自慢…?」

「俺な、二年前に知り合いのバンドから作詞作曲頼まれたんだ」

「はあ…」

ここまでは至って普通の話だ。

「で、その曲ってのが…さっき俺が歌った歌」


……え?
いやいやいや、ちょっと待て。

「Diceの…七人七色…ですか?」

いきなりTOP10入りしたデビューシングルの曲…?

「そ。すげーだろ」

ニッと笑って私の頭を撫でる瀬良先輩。

すごい…すごい!!



キラキラと目を輝かせていると、
「……ひなた」

先輩は口を開いた。

「はいっ?」


「ギター、興味あるか?」






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