白衣を脱いでキス。




診察室に戻ってくると、さっきの先生以外の人が誰もいなくなっていた。


「本田さん、上がっていいよ。ヒデが車で待ってるって」


本田さんとはこの衛生士さんの名前みたい。

ヒデは誰のことかわからないけど。


「え…でも」


ためらう衛生士さんに先生は「今日はもう築山さんだけだし僕だけで大丈夫だよ」と付け加えた。


「すいません、ありがとうございます」


迷ったあとにぺこっと頭を下げると衛生士さんは診察室からいなくなった。

そういえば…先生と2人きりだ。

だからなにというわけでもないのに、ついドキドキしてしまう。


「さて、やっぱり結構深いね。削ってクラウンという義歯を被せようと思うんだけど、どうかな?」


どう、と聞かれても、あたしにはさっぱりわからない。


「先生にお任せします」


「聞きたいことは?」


「特には」


そう答えると、さっきみたいに背もたれを倒されて、ライトを当てられた。



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