超人戦争
 現地名では南極ビクトリアランドとなっている市街は、豪州占領の朗報(ろうほう)に湧(わ)き立っていた。デーモンはオーストラリア攻略の英雄として、超人達の歓呼(かんこ)に包まれ、超人王国の首都サタニウムの中央通をパレードしたのである。
 中央通はデーモン通と改称され、デーモンの石像がサタンの偶像(ぐうぞう)が立つ超人広場に、サタン像と向い合って建立(こんりゅう)された。デーモンは超人の副神(ふくしん)として、その盛名(せいめい)は南極、オーストラリア、延(ひ)いては宇宙にまで轟(とどろ)き渡ったのである。
 
 神軍はヒマラヤ山脈山腹(さんぷく)の地球軍本営に於いて、緊急会議を開いていた。神軍四軍の内一角が崩壊(ほうかい)し、ケミン(ニュージーランド)軍は孤立、他の二戦線も一進一退の膠着(こうちゃく)状況にある。神軍の権威(けんい)は失墜(しっつい)し、人間間にも動揺が拡がりつつあった。
 ゼウスは神に、救いを求めるしかない。ケミン軍を敗滅(はいめつ)から免(まぬ)がねば、神軍の巻返しは困難となろう。逆にケミンが持ち堪えれば、反撃の契機(けいき)となるかもしれなかった。
 神がケミン救援の切札(きりふだ)として地球軍に送り込んだのは、俗に破壊神と呼称(こしょう)されるシヴァである。
 シヴァは猛将(もうしょう)として知られ、その性格が天使としては余りにも好戦的なので、神から嫌忌(けんき)され、無役(むやく)であった。恐竜戦争時、シヴァ軍団と異名をとる私兵(何れも神を絶対と崇(あが)め、神を冒涜(ぼうとく)する者に容赦のない弾圧を加える天使達である)を率いて、攻勢著(いちじる)しかった恐竜軍を撃破(げきは)し、神軍勝利の発端(ほったん)を造った名将であった。
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