超人戦争
 シヴァは北島をアモンに任せ、現在の南島ダニーデンに前線基地を設営した。此処(ここ)で超人軍グニダール軍を迎え撃ったのである。
 シヴァ軍は神軍には珍しく、天使と人間の割合が半々だった。シヴァは私兵をフル活用し、空中戦でグニダール軍を圧倒したのである。
 十日に及ぶ連日の空中戦によっても、グニダール軍は一歩も南島に入れず、その損害は著しいものになっていった。
 一方アフロン軍はタスマン海の制海権(せいかいけん)を得たものの、上陸直前にポセイドン率いる神軍新部隊の海上封鎖(ふうさ)に遭(あ)い、手をこまねいていた。
 神軍、超人軍双方の総力を結集したニュージーランドの戦いは三月一杯続けられたが、超人軍は結局上陸を果たせなかったのである。
 こうした膠着情況下、超人達は英雄デーモンの出陣を熱望(ねつぼう)した。
「デーモンならば現下の苦境(くきょう)を打開する手立てを打てるのではないか」
 との過度の期待は、南極中に膨(ふく)らむ一方であった。
 そうした最中(さなか)の或る日、デーモンはサタンに呼集(こしゅう)され、正式にサタンの代将(だいしょう)としてグニダール軍の指揮をとるよう要請されたのである。デーモンは快諾(かいだく)し、新婚生活に別れを告げたのであった。
 ビーナスは身の保全(ほぜん)を目的として、デーモンと長い恋路(こいじ)の末に結ばれていた。ビーナスとデーモンは矢張(やは)り、互いに惹(ひ)かれ合うものが強かったのだろう。二天使の絆(きずな)は、今や本物になっていた。
 出征前夜、満天の星空の下、デーモンとビーナスは最後の契(ちぎ)りを交わした。二天使共身体を横たえている。


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