ミチノソラ
「あたしの人生で

 一番ハッピーだったこと・・・?」


あたしはすでに手放したと思われた

今までの現実を振り返った。


「そうさ~、ハッピーだったこ~とを話せば~

 ここか~ら、あたいが~連れ出してあ~げる~」


その歌うような口調に合わせて、

マニキュアまでピンク色に塗ったお婆さんの手が

しなやかに空を舞っている。



人生で一番ハッピー・・・。



近頃うわべだけの笑顔を浮かべていたあたしには、

ハッピーという言葉そのものがとても縁遠く感じられた。



「ええと、こないだの飲み会のときとか?」


あたしは取り合えず、お婆さんの様子をうかがうため、

やはりうわべだけの言葉をつむぎ出してみた。



「あんた~、あたいを~なめてもらっちゃ~困るよ~」


お婆さんの着ているワンピースの、

素材や色の深みが異なったたくさんのコサージュが

逆立ったように揺れた。



そして、誰のものだか知らない甲高い声が聞こえた。


「ハイ、不合格!ハイ、不合格!」




そのときだった。




パカッ!





あたしの足元のピンクの床が、

まるでお笑い番組で見た罰ゲームのセットのように、

きれいに左右に開いた。





そして・・・





あたしはジェットコースターに乗った!



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!



「きゃーーーーーーーーぁぁぁあ!!!!!」


思わず悲鳴を上げたあたしの頭に直接、

あのピンクのお婆さんの声が聞こえてくる。


「ここが~あんたの~唯一の出口さ~。

 あんたは~ここま~で、合格して~またお~いで~」



「きゃーーーーーーーーーーーーーーーー!!」



そうやって、あたしは、黒いドアの前に来た。
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