死霊むせび泣く声
「悪いって、仕事しないってこと?」


「ああ。あいつら給料泥棒だと思うよ。辛島なんか一日中週刊誌読んでるし」


「一度社長に言ったら?」


「多分、社長は辛島たちを頭数揃えで置いておくと思うから、首にはしないだろうね」


「そう……」


 里夏が曖昧な口調で頷き、ケーキをカットしてフォークで差す。


 ちょうどケーキの上に載っていた苺が、人間の血液と同じ赤だったので、俺は少し吐き気を覚えた。


 今年の夏に散々見た、あの血の塊のように見えてしまったからだ。


「どうしたの?……気分でも悪いの?」


「いや。大丈夫、大丈夫」


 俺が吐き気を押さえ込み、手元にあったチーズケーキの山を崩す。


 そして口元へと運んだ。

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