死霊むせび泣く声
 俺が後を追いながら、


「ダメだ。絶対あの武者の霊が来てる。君には鎧や甲冑の鳴る音が聞こえてないのか?」


 と訊いてみた。


「聞こえてないわよ。聞こえるわけないじゃない。あたしは霊から取り付かれてないんだし」


 里夏はクールに返す。


 まるで俺に取り付いた死霊とグルにでもなっているかのように。


 俺は足がガタガタ震え出した。


 とても立ってはおられず、その場にへなへなと座り込む。


「大丈夫だって。死霊なんか来るわけないんだから」


 里夏はどこまでも冷静だ。


 俺には到底考えられないぐらい。


 そして俺はおずおずと立ち上がり、何とか歩行ぐらいは出来るようになった。
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