死霊むせび泣く声
 ある程度スピードを上げながら、俺は海辺へと向かった。
 

 信号停車で立ち止まり、空を見上げる。


 予想外だったが、雨が降り始めた。


 俺は恨(うら)めしそうに空を睨む。


「……降ってきやがったな」


「ええ」


「せっかくのデートが台無しだね」


「仕方ないわ。天気なんてコロコロ変わるんだし」


 里夏はサバサバとした口調でそう言った。


 俺はワイパーを回し、雨を避けながら、運転し続ける。


 さすがに車の運転にはあまり慣れていない。


 普段から企画部で企画書ばかり打ち続けている俺は、通勤には電車を使っていた。


 手の腱鞘炎は簡単には引きそうにない。
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