死霊むせび泣く声
「ちょっとさっきの足の痣見せて」


 と言った。


「ああ」


 俺が頷き、足を上げる。


 確かに足首に赤みがかった痣がくっきりと付いていて、やはりあの時見た武者の手首が巻き付いたんだろうと思われた。


「気にするほどのことでもないかもな」


「まあ、そうね。あたしも武者の霊なんて信じないし」


 里夏は笑い飛ばすようにしてそう言い、缶に口を付けて、残っていた飲み物を啜り取る。


 そしてテーブル上に置き、またサングラスを嵌めてデッキチェアーに座り込む。


 俺も寛いでいた。


 夏の時間はあっという間に過ぎ、夕方になる。


 辺りは暗くなり、人があまりいなくなった。

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