死霊むせび泣く声
 借りる段階で、ある程度――根掘り葉掘りとまでは行かないのだが――事情を聞いて、知っておく必要があったのだ。


 ただ、もうそれは出来ない。


 それに俺自身、ノイローゼになっていて、あのマンションに住み続けるだけの気力も体力もないのだ。


 だが、かと言って、新しい物件を見つけるには時間が掛かってしまう。


 幸い今の夏という季節は、春のように物件が大量になくなるわけじゃないし、空き部屋が比較的多いので、案外簡単に部屋を探せそうだった。


 俺は早速会社に戻って、立ち上げていたパソコンをネットに繋ぎ、物件を探し始める。


 ことは迅速に運ばないといけない。


 俺自身、一刻も早く今の状態から抜け出したいのが本音だったから……。


 仮に見つかった物件がボロだったにしても……。
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