甲子園の奇跡
……………

大会が始まって16日目の8月17日。

あたしは甲子園球場、三塁側アルプスにいた。


そう。清稜高校は準決勝まで進み、これから行われる第一試合で1枚の決勝戦行きの切符を賭けて戦う。


周りは応援団や学校関係者とか、今日の試合の勝利を信じて盛り上がっていたけど、あたしは別のことを考えていた。

諒大、昨日電話したけど繋がらなかった。

少しでいいから話したかったな。



そんなあたしの気持ちはそっちのけに、『ウーーーーーーー』というサイレンと同時に試合が始まった。

直後、電光掲示板には「147」「149」の数字が映し出され、観客からはどよめきの声が上がる。

元々速い球を投げるとは聞いてたけど、倉持先輩、甲子園にきてから調子いいのかも。

バッターボックスの打者は手も足も出ずに三球三振。ワンナウト!


これは期待できそうかなと思ったのも束の間、ピッチャーゴロだと思われた打球が倉持先輩の頭上を越え、センター前へ。

ワンナウト一塁。

その後、送りバント、ツーアウト二塁になった所で、次の打者がフェンスダイレクトの大きな当たり。

二塁打者生還で一点先制され、なおもランナー二塁。


いくら早いボールを投げても打たれる時は打たれる。

全国の強豪が集まった甲子園。


お願い、抑えて!

祈るような気持ちであたしは声援を送る。


相手打者のバットは空を切った。
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