空き瓶ロマンス



「うーん、そうだな……。


僕だったら……」
 

みちるはふと書店の前で足を止めると、ポップと共に飾られている巨大な本に視線を送っていた。


英語のレタリングが踊り、ティラノサウルスが牙を剥いている派手な表紙……。


「あ、あれって、週刊のやつ! 

……創刊号は安くても、結局コンプリートするのに十何万もかかかるんでしょ! 

さすがに無理だよぅ……」


「あははは、そうそう。

……いや、無理に、って事じゃないし、バイトでもしっかりやって、いつか自分で、って思ってるから大丈夫」
 

……という事は、みちるはあれを全部集めるつもりなのか。


バイト代を全てつぎ込んででも。
 

その執念は、どこからくるのか分からないけど、凄い……。


「あ、でも。いつか、コンプリートしたら、見せてねっ」


「もちろん。毎週おいでよ」
 

みちるが、ぽんぽんと軽く私の頭を撫でた。
 

ふと彼を見上げると、やはり双子とはいえ、彼の方が背が高い。
 

私がぺたんこの靴を履いているのもあるだろうが、それでもみちるは『男の子なんだなぁ……』とつくづく思った。


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