One's time《短》

マウスを右手で握ったまま後ろを振り返る。

そこには閉じられていた瞼をパッチリと開いたマリカが、俺を見ていた。


「おはよ。もう夕方だけど」

無駄だと知りつつも、今が“おはよう”ではなく“こんばんは”に近い時間だとマリカに告げる。

マリカはゆっくりと起き上がると、目を何度か擦った。


「そう。ねえ、お腹すいた。ご飯食べよ」

……やっぱり無駄だったか。

マリカにとっては世間が夕方でも、自分が起きた時が朝なのだ。

擦ったせいで赤く染まった目元のまま、マリカはマットレスの上に立ち上がって、伸びをした。
< 11 / 39 >

この作品をシェア

pagetop