One's time《短》
マウスを右手で握ったまま後ろを振り返る。
そこには閉じられていた瞼をパッチリと開いたマリカが、俺を見ていた。
「おはよ。もう夕方だけど」
無駄だと知りつつも、今が“おはよう”ではなく“こんばんは”に近い時間だとマリカに告げる。
マリカはゆっくりと起き上がると、目を何度か擦った。
「そう。ねえ、お腹すいた。ご飯食べよ」
……やっぱり無駄だったか。
マリカにとっては世間が夕方でも、自分が起きた時が朝なのだ。
擦ったせいで赤く染まった目元のまま、マリカはマットレスの上に立ち上がって、伸びをした。