幼なじみは俺様王子。

◆嘘つきな唇





――旅行当日。


「これからバスに乗り込むが、忘れ物はないかあ?」


グランドに先生の声が響く。


旅行、か。


楽しみだなぁ……。


晴天の空を見上げながらあたしは笑みを浮かべた。


ブーブーブー


すると突然、ポケットの中で携帯が震えた。


……ん?


誰だろう……。


あたしは携帯を取り出してディスプレーを覗いた。


【着信 爽】


……爽?


どうしてこんな時間に……?


爽のいるはずのC組を見渡したけどそこに爽はいない。


不思議に思いつつもあたしは電話を耳にあてた。


『なにニヤニヤしてんだよ』


第一の声は、そんな言葉。


……は、はい!?


な、なんであたしがニヤニヤしてたの知ってるわけ!?


「な、ななな、なんでわかるの!?」


そう言った瞬間、いきなり後ろからギュッと抱き締められた。


きゃああああああ!


だ、だだだ、誰!?


も、もしかして……楓?




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