幼なじみは俺様王子。
――お風呂から上がったあたしは、鏡の前でにらめっこしていた。
原因は、コレ。
「浴衣かぁ……」
ここは指定された浴衣があって、旅館内ではそれを着ているらしい。
でも、似合うかなぁ……。
楓クンに“似合わない”なんて言われたらショックだよぉおお……。
……あれ、あたしさっきからどうして楓クンのことばっかり心配しているの?
楓クンはあたしの彼氏でもないんだから、気にする必要なんて……ないのに。
あたし、最近おかしいな。
楓クンといると、なんだか調子が狂う。
「はぁ……」
ため息をついて、あたしは脱衣所を後にした。
――ガチャッ
「た、だいま…」
あたしが声をかけると、それに気づいた楓クンがひょこっと顔を出した。
「ずいぶん、長湯だったな?」
「……えっ?」
あたし、長湯してたかな。
そんなにしてないと思うけど……。
ふと時計を見ると、針はお昼を回っていた。
「……う、嘘っ!?」
あ、あたし2時間も入ってたの!?
自分でも驚きだ。
「お湯ん中で溺れ死んでんのかと思った」
楓クンはニヤリと笑った。
……な、なな、なんて物騒なことをっ!