ココロ
プロローグ




この春、晴れて高校生となった私の名前は西崎 心。
『シン』では無く『ココロ』と読む。
だけど皆にはシンと呼ばれてたり。

背は普通くらいで、髪はけっこう長い。
お化粧なんかは面倒だからしていないけど、母の遺伝子のおかげでパッチリおめめと厚みの無い薄い唇をゲットしたため見た目は悪くは無いと思う。
可も無く不可も無い、いたって普通の女の子だと自負している。





「シンちゃん、一緒に帰ろー」
「うん」


―彼女はクラスメートの渚 まどかちゃんだ。
渚(ナギサ)の『な』と西崎の『に』で私達の席は前後同士。
そんなわけで必然的に仲良くなったのだった。




「渚さん西崎さん、また明日」
「さよなら」
「うん、バイバイ」


クラスメートの女の子達に手を振り私達は教室を出た。
周りのどこを見ても女の子だらけ、というこの状況にもようやく慣れて来た気がする。

…そう、私が通っているここ桜ヶ丘高校はそれなりに名門の女子高。
ここの生徒の大半は育ちの良いお嬢様達だったのだ。







―もちろん、私は違うけどね。


「まどかちゃん、今日お迎えは?」
「今日は無いの。シンちゃんと一緒にバスで帰りたくて」


にこ、と可愛らしく笑うまどかちゃんもお嬢様の部類に入る。
だいたいいつもはお抱えの運転手様がお迎えに来ているのだ。





「そっか、嬉しいな」
「シンちゃんはお家が遠いから大変だね」
「そんなことないよ」


私達は並んでバス停へ向かう。
基本的に私はいつもバスで30分近くかけて通学していた。

…もちろん、それには訳がある。






私にはどうしても、例えここが自分のキャラからは程遠いお嬢様学校だったとしても。
自宅から離れたこの女子高に通わなければならない理由があったのだ。




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