HOTEL
始まりは
「はーい!皆さ〜ん!騒がないで、ちゃんと聞く!ほら!そこ席に戻る!」

とHRで新米担任の鳥居かおり先生が言った。

学生達はしおりを片手に修学旅行でどこどこの場所に行きたいだの、どこどこのクラスの誰々に告白したいだの、大いに盛り上がってる最中だった。

「よし、静かになったね!修学旅行でK県にきまったのは皆ご存知だと思いますが、旅館の都合上、私達のクラスだけは、別の旅館に決まりました。」

ブーイングの嵐発生。
もちろん夜には他クラスの部屋に訪問したり、他クラスの異性へのアタックチャンスが減るからで、まぁこの辺のことは昔から相場は決まっている。

「はいはい!旅行の一週間前だということで、今更中止にするわけにもいかないし、私達のクラスなら大丈夫だろうと言う事で決まりました。諦める!何?何かよからぬ事考えていたんじゃないでしょうね?」
と先生は笑う。

鳥居先生は、他の先生に比べると自由だ。自由というと語弊があるが、柔軟な対応力と理解があると言うべきか。
だから生徒からの人望は悪くない。
新米のくせに。

そんな鳥居先生の性格が災いしてか、自由にやっているように見える私達のクラスは他の先生から疎まれている節がある。
今回の別旅館の件はそのせいなのではないかと私は思った。

「今回の旅館では、監督する先生は私と金見先生しかいないので、ある程度の事は黙秘します!
た・だ・し!夜に旅館外に抜け出したり、飲酒したりするのは厳禁なので、もし違反した場合には、厳しい罰が待っているので、覚悟すること!」

ほらね、先生にあるまじきこんな事言っちゃうんだから。

だが、よからぬ事を考えていた一部生徒達はその「罰」という言葉に一瞬怯んだ。

そういう所は徹底的にやるのだ、この先生は。厳しい時は厳しい。
まぁそれくらいでないと私達のクラスをまとめるのは難しいだろうが。

ちなみに保健の金見先生は、ナベ金先生とも言われていて、オカマだ。鳥居先生とは仲が良いらしい。

「まぁ、別旅館になっちゃったけど、特別措置で露天風呂もついているみたいだし、素敵なところだそうよ!しおりにも書いてある予定は今まで通りなので安心するように!
南さん、ちゃんと聞いてたかな?」

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