HOTEL

K県

「皆さんこんにちわ。こうなん観光バス、バスガイドを勤めます、重永恭子と申します、これから五日間皆様とお供になりますので、これからよろしくお願い致します。」
とにっこり笑い、皆からは拍手喝采だ。

他クラスのバスガイドさんは、少しばかり残念な方が多かったのに、私達のクラスには、これでもかという程に美人なバスガイドさんだったからである。

男子は大喜びで、女子から大顰蹙かと思いきや、気さくな性格と、美人がすぎて、女子達までがみとれてしまった様子。

美知子も例外ではなく
「ほぇ〜、すごく綺麗な人、憧れるなぁ〜!私もあんなお姉さんになりたぁい」
と言う。

私は
「美知子は美知子で美人なのにわかってないね。」
と小声で言ってみるが、
案の定、彼女にこの声が届くことはなく、代わりに前に座っていた鳥居先生が聞いていて、くすくす笑っていた。

加えて地獄耳か、すごい先生だこと。

皆がバスガイドさんと雑談している最中に後ろから
「おい、はんな達はどこからまわって行くんだ?」
と話かけてきたのは武井東吾で、皆の前では爽やか男を装っているが、なぜか私の前では爽やかさとは程遠い人間になる。

「うーん、T寺とK公園とかだったけ、美知子?」

「ん?そぉだよ、最初は〜…」
と予定を一から完璧に答え、彼女はこう見えて、かなり優秀な子なのだ。

「だってさ、…なんで?」と私が武井に答えると

「俺らとそんなに変わらないし、一緒に行こうぜ」と言い出した。

私は面倒な事はごめんだと、断ろうとしたが、美知子が「いいよ」と答えしまったので一緒にまわる羽目になった。
美知子には弱い。

武井東吾の班は五人で、私達の班は四人。
だが、班と言っても別旅館の件があったからという理由で一人でさえなければ別行動でもよいとの計らいがなされたのであった。

寛大すぎる措置。

新米にそんな権限があるのかと思うが、実は鳥居先生は校長先生が引っ張ってきたからある程度認められているというのがもっぱらな噂で、現に彼女の自由が許されているのだからあながち嘘ではないのかもしれない。

まぁ、それで美知子と二人で気兼ねなく行動できるので、内心嬉しかったのだか、武井のせいでぶち壊しである。
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