幼なじみ


「リオちゃんここをね...」
モニターを見ながら眉をしかめる監督。
監督の言いたいことはわかる。
ただリオはまだまだ新人。
俺でも新人の値に入るぐらいだからな...
「はぁ...」
監督の言いたい事がいまいちよくわかっていない。





この監督の求めるものを言葉にするのは難しい。
「リオこっち来て」
つまり俺がさせなきゃいけない。
酒井さんが言ってたのはこういうこと。
「ここをこうして...俺を見て」
「こ...ぅ?」
「そうそう...んで、目線をこっちに...んで手をこっちに...」
「そうそう!!リオのその表情!」
監督がうれしそうに声を上げる。






もくもくとシャッターを切るカメラマン。
指示を出す監督。
俺を見つめるリオ...。
これは仕事...何度自分に言い聞かせても頭をよぎるのはあの事件。
「涼...どうした?」
「いえ、なんもないっす...すいません」
酒井さんが気を使って休憩を入れてくれた。






「はぁ...」
「涼、大丈夫?」
心配そに俺の顔を覗き込むリオ。
「休憩時間まで近寄んな。俺関わりたくーねから」
「ごめん...」
あせって離れていくリオ。
優衣...今どうしようもなく君に会いたい。






「涼、もういけるか?」
「はい、大丈夫っす!」
立ち上がらなきゃいけない。
優衣のために...。
前に進まなきゃいけない。
自分のために。






< 118 / 159 >

この作品をシェア

pagetop