好きすぎた、たぶん。


今回の新曲は、大体いつくらいに出すってのは決まってはいるけど、結構早い段階で俺らに話が来たから、特に焦らされてもいないんだけど、でもここまで何も思い浮かばないとさすがに焦る。



詩織ちゃんと別れたあの日から、俺の中の喪失感が消えることはなかった。



夏実が願っていたように会わなくなってきっといいことはあった。



たぶん。



でも、俺の中では何かが終わった感がすごくて、正直仕事への気力すら湧いてこなかった。



会わなくなってやっぱり思わされる。



好きなのかもしれない。



俺の中でその思いが確信になりつつあった。



でも確信になったところで、何がどうなるわけでもない。



会わなくなったことには変わりないわけだから。



あの日、詩織ちゃんと終わったあの日。



俺は嘘をつくことしか出来なかった。



嘘をついて詩織ちゃんと別れることしか出来なかった。



詩織ちゃんに告白されて、正直本当に嬉しいと思った。



俺を好きだと言ってくれて。



でも、そう言われた瞬間、俺の中の悩みは消えた。



もう会わないと告げるしかないと、その道しかないと気付いた。




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