甘い声で囁いて


リビングのドアが開いていて、お兄ちゃんが深刻そうな顔をしてあたし達を見る。


「最初お前が嫌な事を全部忘れたいならそれはそれでいいって思ったんだ。でもそれは違うって、あいつが言った」


「あいつ?..それって加宮さん?」


あたしの疑問にお兄ちゃんは頷いた。


「過去の恋から逃げてゲームばかりしてるお前に、それは間違ってるって言ったんだ。このままだったら絶対に次の恋は進めないって..そう言われて。だったらどうしたらいいかって、相談したら“だったら俺が何とかしてやる”そう言ったんだ」



加宮..さん。


「ごめん、みゅう、お前を騙すような事して、悪かった」


深々と頭を下げるお兄ちゃんにあたしは近付いてその肩に手を置いた。



「あたし、思い出したよ、全部。それでね、あた、し」



あたし


加宮さんが好き。


たまらないくらい、好き。


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