エングラム
道案内などしなかったが、先頭を歩くケイは色褪せた灰色の建物の通りの裏に入った。
この辺りを知っている人は少ないとか自負していたけど…意外と多いのかな。
「いや、ケイはチカラを使って知ったような感じだ」
私の心を読んでシイが言った。
「へぇ便利ですねってまた読みましたね」
ユウが建物の脇の扉を開けた。
金属の扉が高い声で鳴って開く。
「よく考えれば不法侵入っぽいですね」
ユウが笑いながら言って、開けた扉に入るよう促した。
「だね」
「確かにな」
「そうですね」
私たちはそれぞれ言葉を返し、灰色の中に入る。
「2階のフロアに行こう」
ケイが階段に足を乗せて言った。
「はい」
それに続いて、階段を上った。
「──ごめんねネズミさん」
ケイが足元を見ながら言った。
「まぁ一々構ってたらきりがないって分かってるけど」
そのケイの言葉は、私には小さくて聞こえなかった。