蝉女
 大根と人参の味噌汁と、切り身の塩鮭を焼いただけのもの、それと納豆。それが今夜のメニューだった。
 普段コンビニ弁当や惣菜で済ませる俺に料理のレパートリーなどあるはずがなく、綺麗なままの台所でたったそれだけを作るのに、随分と時間がかかった。
 お嬢様育ちのミー子はシンプルすぎる夕飯に唖然とするんじゃないか。小さなローテーブルに食器を並べながら思ったが、ミー子は立ち上がる湯気に目を輝かせた。
「すごいです、おいしいです。お料理って楽しいですね、良隆さん」
 ミー子が幸せそうに笑う。
 質素な夕食だが、久々に食べる「誰かと一緒の家ご飯」は思っていた以上に箸を進めた。
 無邪気で健気なミー子。歳はハタチ前後……多分実家で暮らす妹と同じくらいなのだが、うちの妹にこんな可愛いげは存在しなかったと思う。
 昼間よりも箸の持ち方が上達しているミー子を眺めながら、俺は焼き鮭を飲み込んだ。

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