不思議の国のお伽噺。



「むー…もう、いいよ。


ごめんね…っ」



「来ないで、ほしかった…


穢れた私に…アリスに触ってほしくなかった…


でも、やっぱり…アリス…貴女は落ち着くわ…」



むーは、戸惑いがちに、私の背中に腕を回した。



「夢の中には、いつも幸せな世界しか浮かばなかったの。


でもね、いつの日からか、アリスが夢に出てきて、私に言うようになったの




『王子様なんか来ないわ、あなたで作り上げなさい』って」





むーは、囁くように私に伝える。





「また…私のせいなんだ…っ!」



「結局、愛なんてそんなモノよ


見えないからこそ、触れないからこそ、人間はつかもうともがくのね。

そして、愛の方向が曲がれば、血に塗り固められた愛をつかんでしまうの…」







私の目の前には、光の粉が広がっていった。





「むー…っ!!」




「最期に、アリスと話ができてよかったわ。


ありがとう、大好きよ…?」





彼女は私に言葉を遺した。














言葉は、鋭く私を傷つけた。












そして光は、はじけた。











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