不思議の国のお伽噺。




城に響く産声を、私は男性の隣で聞いた。




もちろん私の姿は、見えていない。



男性は、その瞬間喜びにうち震え、立ち上がった。



『可愛らしい姫君にございます』



姫が生まれたことに安堵の息を漏らす男性。



どうして…?




「次に国を治めるのは女性と決まっていたからね。」



急に、耳元で聞こえた声。



「レ、イ?」



「そう。


覚えてくれていてよかった。」



レイの顔は、私にははっきり見ることができない。




「ほらアリス、記憶においていかれるよ?


早く見ておいで」



レイに軽く背中を押された。一歩踏み出すと、さっきまでの光景はなくなっていた。



ここは…?





『パパー』



駆け寄る、幼い子供。



『なんだいアリス?』



穏やかで、それでいて威厳のある面立ち。



てか、アリスって…。

じゃああれは私の昔の姿、そして私のお父さん?






「ぱ、ぱ…?」





声に出せば、唇はわなわなと震えた。











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