不思議の国のお伽噺。



「しろ、ウサギ?」



名前を呼ぶと、私の心臓はおかしいくらいに跳ね上がった。

その様子を見て、三人は怪訝な顔を向ける。



「アリス、まさか、」



「三月ウサギはいつも、一言、余計、だよね


アリスに、また、あんな思い、させるつもりなの」



「2人ともやめや!!」



そう叫んだ帽子屋の目線は、チェシャ猫に向かってる。




「チェシャ猫、お前白ウサギのこと伝えんと、どうやってアリスに記憶をつなぎとめてもらうンや」



「…アリス、そろそろ行こう」



そういって、チェシャ猫は立ち上がる。
私は呆然としながら、ゆっくりと立ち上がった。




「お前まさか、一人で背負い込む気じゃ「帽子屋さん。何をしようと、あなたには関係ないでしょう」




咎めるようなきつい視線は、まっすぐ帽子屋に向かう。



「もう誰かが苦しむのはこりごりです」



「チェシャ!!

そんな、守り方したって、傷つくのは自分やろ!?
そんなんで、傷ついたお前見て、誰が幸せになるというンや!!」



椅子から立ち上がる帽子屋。


だが、チェシャ猫は彼の問に答えることはなく、扉を開けて、私を歩かせた。

















この場から離れてしまうと、自分の一番近い人間を無くすような気がして、私は一歩を踏み出すことが億劫でたまらなかった。




そして、私たちは、屋敷から出て、次の姫のいる場所に向かったのであった。











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