不思議の国のお伽噺。



ア「え?」

チ「好き?」



好きって言われても…

私まだ少ししかここにいないから分かんない…

でも…



ア「嫌いじゃ、ない」

チ「じゃあ、アリスは嫌いじゃないものを壊したい?」


ア「壊し、たくない」



私は何も壊したくない。

彼のことも壊したくなかった。




彼を壊した…?


気持ちは、急に、罪悪感に溢れ、胸を締め付けた。



でも、私が〝彼〟に何をしたのか。
どうして壊れたのか。



〝彼〟は誰なのか。



それだけは、出てこなかった。




チ「アリスの記憶がひとつ戻る度、この世界は一つずつ壊れてく


それに、一番苦しいのはアリスなんだ」


ア「え…」


チ「だからアリス



何も思い出さないで…、そのままでいて…


僕は、苦しむアリスだけは見たくないから…」




チェシャ猫は俯いて、消えそうに言う。



私は。



ア「分かったよ。


だから、泣かないで

…チェシャ猫。」



チェシャ猫が泣きそうになっていると、私も泣きそうになった。


…なぜだろう。


チェシャ猫とは、今日初めてあった気がしない。


ずっと前から…知っているような…。



チ「うん…ありがとう…」













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