青空キャンパス
「……聞いてます?」

「…………あ、はい!」

あまりの急な接近で、美月は自分の世界に入りこんでいた。


「俺、今来たとこなんですけど、出席カードとかってもう配られました?」

「あ、ま、まだです」

もっと、もっと喋りたいのに、気になる相手を前にすると、舌が口の上に張り付いたように上手くしゃべれない。
気持ちが空回りする自分に同時に『いくじなし』とつっこんだ。


「ほんま?!よかった。間に合ったわ」

男の顔が笑顔になった。

その笑顔を見ると思わず、
「プリントとか余ってますけど、いり…ます?」

と言ってしまった。


「助かる!ありがとうね。」


そのプリントは、余ったものではなく、友達の分に確保したものの一部だった。


自分のために笑ってほしい、


役に立ちたい、


名前も知らない男に今美月ができる精一杯だった。

美月は感謝した。
まだ出席を確認しなかった先生に。
今日授業を休んだ友達に。

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