依存~愛しいキミの手~
「何か頼もうか。みんなで決めていいよ。あ、グラス空になったら好きに頼んで」


にこにことしながら羽振り良く言う岩崎さんに、きっとこの人はゆりあの太客だと気づいた。


気分悪くさせないように気をつけないと…。


「じゃあ、岩崎さんお寿司好きだからお寿司頼もうか。あ、あとフルーツ食べたいな」


ゆりあがテキパキと決める。


…テキパキじゃない、これが売れてるキャバクラ嬢なんだ…。


きっと岩崎さんは遠慮をされるのが嫌い。だからと言ってガツガツするのもあからさま過ぎる。


こういう些細なことでも、きっとお客さんの性格を読まないと失敗するんだろうな…。


岩崎さんが、ウイスキーのグラスを手に取ると、氷が涼しげな音をたてた。


「ウイスキーの、そのカランって鳴る音綺麗ですよね。私もウイスキーはロックで氷の音と匂い楽しみながら飲むのが好きです」


そう言うと、岩崎さんは一瞬驚いた顔をし、口元に優しい笑みを浮かべた。


「若いのにウイスキー好きなんて珍しいね」


「父の影響なんです。ウイスキーマニアだから(笑)」


「へぇー。どんなのがおすすめ?」


岩崎さんの背中がソファーから離れた。


お、食いついてきた!


「オールドパーかな?あとは、シングルモルト良く飲みます」


「おー同じだ!僕もオールドパー好きなんだよ。何か嬉しいね」


こんな感じで岩崎さんとウイスキーの話しで大分盛り上がった。
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