依存~愛しいキミの手~
手をつないで段差に座り、タバコに火をつけ海を眺める。


「俺、資金貯まったし来年店出すことにした」


圭介が海を走る遠くの船を見ながら行った。


私はタバコの煙を吐き出しながら笑って頷いた。


ホストに戻る時、圭介が決めたこと。


「ホストに戻るからには、ダラダラやらないで先の目標持ってやることにする。俺、資金貯めて店出すよ」


知美に色々相談して、ホストに戻った先のことを考えたらしい。


りょうちゃんが夢を見ていた自分の店を持つこと。


それを俺も頑張ってみたい。


そうワクワクした目で話していた。


「だから、店出して軌道に乗ったら…結婚しよう」


吐き出していた白い息が止まる。


え…?


耳を疑った。


目を丸くしながら圭介の顔を見上げると、優しい目で私を包み込む。


そして、カルティエの小さな箱を差し出した。


早まる鼓動を抑えながら、両手で受け取る。


開くと、中にはダイヤが光る指輪が入っていた。


「ホストなんて、世間から白い目で見られる職業だって分かってる…。絶対に苦労かけないし、そういうのからも守るから…」


箱を持つ私の両手を、圭介の両手が包む。


私は、感動がこみ上げて言葉に詰まり、頷くことしかできなかった。


圭介が左の薬指にはまるトリニティをはずし、新しく指輪をはめてくれた。


2004年12月5日


5年前付き合い始めた場所で、プロポーズをされた。
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