雪の種
◇第7章◇ 嵐




「桜井さん、ちょっといいかな?」


放課後、早く帰りたいあたしに1人の男子が声をかけてきた。

正直話したくない。

女子ともまともに話せないあたしが男子となんて話せるわけがない。

話せるとしても亮君ぐらい。


「あのさっ、俺…桜井さんのこと好きになったみたいで…!俺と付き合ってくれないかな?」

好き?
これっていわゆる告白ってやつでしょうか?


「あの…、ごめんなさい。あたし、あなたの名前も知らないから…」


本当に誰かわからない。


「あ!俺、山下カケル!」

って言われても…わからない。

それに山下君だけじゃなくてこの教室にいるほとんどの人の名前がわからない。


確実にわかるのは亮君だけ。

千佳ちゃんも少しだけ話しただけでまだわからない。


「翼、帰ろう」

腕に温かい感触が走る。
亮君の声が目の前でした。




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