雪の種




「おはよ、行くぞ?」


久々に彼の笑った顔を見た。

無邪気に走る姿を見た。

前と、変わらなかった。



「あ、翼ちゃん久しぶりー!具合大丈夫?」


千佳ちゃんも、他の子も、前と変わらずに話しかけてくれる。


あたしの存在を認めてくれているように思えた。


ここにいていいんだと、
また思えるようになった。


「翼の居場所は、ここにある」


そう笑いかけたあなたが優しすぎて、あたしはあの時泣きそうになったんです。


今まで休んでいた分のノートは千佳ちゃんが見せてくれた。


千佳ちゃんはあたしの休んでいる間にショートカットにしていた。


「千佳ちゃん、ショート似合うねっ!」


「ほんとに!?切ってよかったあ。それと、千佳でいいよ」


千佳は、毛先をくるくると巻く。


丸い顔にショートが本当によく似合う。


あたしは自分の長くのびきった髪を手で梳いてみる。

長っ、てかパサパサ…。



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