【X'mas】百合色をした薔薇の歯車/GIADOOLⅢ

1―3.スラム

 そこは、他の地域と違い、政府も自治体も存在しない。


 いくつかの裏組織が仕切っており、そのため、治安部隊もなく、清掃なんてもってのほかだった。


 国の最西端・・・非政府地区。


 別名、スラム・・・・。


 この戦乱の世の中で唯一戦争を逃れる場所・・・。


 戸籍も、財産も、プライドもすべて捨てたものだけが住める唯一の楽園・・・。


 もちろん、戦後、彼らに帰る場所などあるはずもない・・・・。


 しかし、スラムが『楽園』なんて、どこまで皮肉なんだ・・・コノ世界は・・・・。


「百合の花?あんた、いったい今がいつだと思ってるんだい?」


 キリトがスラムで探したのは、花屋だった。


 もちろん、スラムにある『花屋』


 あそこにあるのは大麻だし、あそこに置いてあるのはコカインだろう。


 まぁ、『花』は『花』だ。『花屋』で売られていても不思議ではない・・・。


「それを分かっていて、聞いているんです。置いてないですか?」


「無理言うんじゃないよ。こんな場所で、そんなまっとうな花を買おうとする客自体が少ないんだから・・・。」


 花屋の女主人は、表情だけで本当に困ったというアピールする。


 それもそうだ・・・。


 よくよく考えたら、花自体が高級品の昨今。


 貧乏人が集まるスラムでそんなもの手に入ると考えた自分がバカだったのだ。


 だけど、同時に思う。


 ・・・・・・そんなもの・・・ココ以外にどこで手に入れろというのだろう・・・。


「そうですか、他を当たってみます。」


 口にしてみたものの、その『他』の見当がつかなかった。


「他も無理だと思うけどね・・・まぁ、頑張ってみなよ。」


 花屋の女主人は最後に気さくな笑顔を向けて、見送ってくれた。


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