傷恋(キズコイ)
勢い込んで大学まで来たものの……。

先生に何て訊ねればいいのかを考えてなくて、結局学内のカフェでぼんやり座るはめになってしまった。

私、何やってんの…。

ただ、お茶を飲むためにここまで来たみたいじゃない。

盛大にため息をついて背もたれに体重をかける。

ストレートに訊いても、先生は答えてくれないだろうな。
だからといって事情も知らない私は持って回った訊ね方なんて出来ない。

どうするかなぁ…。





ストローを咥えて思い悩む私の目の端に、ここにいるはずのない人が映った。

征也さん!?

目を疑った私はその人をマジマジと見る。

征也さん…だよね?

彼がこんなところにいる理由は1つしかない。

結衣の事で先生を訪ねたんだ。

結衣と征也さんがどうなったのかは、もちろん知りたい。

だけど。
私の足は校門の方ではなく、先生がいるだろう研究室がある校舎に向かって駆け出していた。
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