先生のお望みのまま

どんなに私が落ち込んでいようとも、一大イベント文化祭は容赦なくやって来る。


学校中がソワソワと浮かれていて、明るい笑い声がそこらじゅうで沸き上がる。私一人が取り残された気分…。

授業は切り上げられ、うちのクラスの出し物も無難に喫茶店に決まった。なぜだかウェートレスの格好はギャルソン風の衣装に決まり、各自適当に白シャツに黒スラックスを持ち寄り、黒布を腰に巻きつけることになった。要するにきちんと衣装を揃える時間と手間を誰もが惜しんだ結果だった。気合いが入っているような、入っていないような…。



じゃんけんに負けた私と杏華ちゃんは黒布を買いに昼過ぎに学校を出た。




「希実、まだつらい?」



二人きりになったせいか、久しぶりに杏華ちゃんの方から聞いてきた。いつも心配そうな顔で、でも触れないようにしてくれていたんだよね。




「うん…。毎日顔を見て声を聞いてるとさ、やっぱりね。」




「そうだよね。でもさ、私思うんだけど…」



杏華ちゃんと話しながら校門を抜けたその時、



「ちょっと、この学校の生徒さん?」




声をかけられ、「はい?」と振り向いた私達はぎゅっとお互いの手を握りあった。


< 97 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop