ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

「弱くないから、玲くん強いから!!!」


判って欲しい。

玲くんのおかげで、あたしは生きている。


「君は……可愛いね」


そして重そうな手で、そう…横に振り続けるあたしの頭をひと撫でし、


「……泣かないで?」


人差し指で、あたしの涙を拭い、苦しげな微笑を向けた。


張り詰めていた緊張が解けたせいか、

思った以上にあたしは泣いていたらしい。



声を忍んで、頑張って笑顔を作ると


「可愛い……僕の芹霞。


僕だけのお姫様」


誤解を招きそうな甘い声で、優しくあたしの頬を撫でた。


「………っ」


そして仰け反るように身を捩る。

苦しいんだろう。


だけど…。


玲くん……フェロモン出しまくり。

こんな時に、何て色気を放出するんだろう。



「ごめ…んね、少し…眠るね?」


気だるげながら、艶やかな色を纏い、極上の美し過ぎる笑みを作った玲くん。


苦しそうな呼吸が…喘ぎにも聞こえて。


あたしを戸惑わせたまま…そのまま意識を飛ばした。


最悪の事態を考え、あたしは玲くんの胸に耳を寄せてみたけれど、規則正しい力強い鼓動を感じ、ほっとする。


紫がかっていた青い顔も、

気のせいか緩和されている気がする。
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