ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



何かを夢見ることも敵わぬのなら。

彼が背負う運命は、何なのだろう。


絶望するのが運命というのなら、

こんなに過酷なことはない。

 

誰か、助けてくれないだろうか。


私は彼に、自分の姿を重ねてみる。


自分とは一体何だろう。

生きるってことは一体何だろう。


誰かこの虚しさを判ってくれないだろうか。


もしも誰かが、寂しい"自分"に手を差し伸ばしてくれたら。

"自分"に気づいてくれたのなら。



その時、私はどうするだろうか。



その手をとるだろうか。

その手を払うだろうか。



建前の私が揺らぐ衝撃に、

私は平気で居られるのだろうか。

 

――桜ちゃん。



今、何故ここに芹霞さんの声が思い浮かぶのか。


私は芹霞さんが苦手だ。


関わらなくてもいいのなら、関わり合いたくない。



それでも


――桜ちゃん


あの声が聞こえなくなるのだけは嫌だ。



――玲くんを助けて。



芹霞さんが、はっきり私の力を乞うた時、

真っ先に心に過ぎったのは煌への言葉。



――優先すべきは櫂様だろ!



私は、私の言葉に縛られた。



――俺は芹霞が好きだ。



煌は私の捕縛から逃れ、彼なりの道を見つけた。



羨ましい。



何故だか、私はそう思ったんだ。

理由は判らないけれど。



――優先すべきは櫂様だろ!



きっと私は逃れられない。



これは自分でかけた愚かな呪い。



そう…思うから。


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