ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

├お姫様の脱走

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――コツコツ、コツコツ。


やばい。

音は完全にこちらに向かってきている。


思いがけず櫂と連絡がとれ、喜びも束の間。


遮るような不穏な靴音に、煌がドアを睨みつけて、あたしをその後方に隠す。


緊張感が高まった時――


「待たせたな」



ドアを開いて出てきたのは、


意地悪そうな笑みを顔に浮かべた、

御階堂充という名の会長が立っていた。



待っていません。

必要ありません。



先輩を望んだのは、ただあの時。


そう。


どうしようもなかった、

あの時だけ――。



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